長森佳容:
「最後まで手を抜かず ~ 3・2・1 ゴーシュート!!」

もっとこうしたい

――:『爆転シュートベイブレードGレボリューション』(以下『Gレボ』)で必殺技のカットを全部描かれてたと思うんですが、そこはやはりこだわりを持ってのことでしょうか。

長森:そうですね。ちょうどその前の『02』(『爆転シュートベイブレード2002』)から「ベイ」を担当させていただいてて、その時はまだ大阪でやり取りしてたのであまり意見を提案できなくて。作画監督とかも言ってたんですけど、色々こうやったらいいのにとかいうジレンマも結構出てきました。『Gレボ』も続くということで、その時に東京に上京してきてやることになりまして、まず制作と監督に、「必殺技、何個かは作りましょう!」と。あとは各キャラクターとか「ベイ」に属性付けましょうというのは提案して、「ベイ」は基本、僕と聖獣とか「ベイ」のメカニックデザインをしてた方と、たまに別の作画監督さんが描いたりもしてたんですけど、そのときに、「『02』のときもっとこうすれば良かったんじゃない?」っていう、自分のストレス解消のはけ口になっていったりしました。

長森:『Gレボ』の最初は世界大会でしたので登場キャラも多いし、はっきりさせた方がいいということで、「必殺技を作ろう!」ということになりました。どうせやるなら、こっちで原画なり修正はやってねということを言われたので、シュートシーンや必殺技は、僕が目を入れて手を付けるっていう形にはしてましたね。当時の『Gレボ』の監督が結構カイが大好きな人だったので、カイの演出が多かったりとか(笑)。あれは僕のせいじゃないんだよ(笑)。話数で言えばカイの話はあまり回ってこなくて、だいたい韓国班が多かったんだけど。

――:そうですね、テロップでよくお見かけしました。

長森:「ベイ」とかはね、どうしても韓国趣旨が入ってるので、いくつかは向こうでやらなきゃならないところがあって。でも、もう少しこっちでやりたいねとは言ってましたね。時間もなかったので、そこまで手も付けられなかったけど。カイに関しては監督のお気に入りだったからあれだけいっぱい目立つところが多くて。そのうち悪ノリも段々増えていくんですけど(笑)。

――:悪ノリ多かったですね。特に「斬」は笑ってしまいました(笑)。

長森:「斬」もそうだね。監督がやたらと忍者っぽいことをしたがる人だったからね(笑)。マフラーに重りが入ってたりするのは、元々あの人は『ドラゴンボール』の監督をやってたことがあったのでそうなってたんですけど。「ここに重り入っててもちょっと意味ないんじゃない!?」と思いつつ見てましたよ(笑)。原作では腕に付けてたから、あれは腕力鍛える為のものだったんだろうけど。一応、『Gレボ』でカイがリストバンドしてるけど、あれは僕のなかではちゃんとパワーリストっていう設定になってるんですよ(笑)。それが生かされることはなかったけどね。代わりに、そこにワインダーを仕込んでて抜くという表現は付けました。もともとギミックを付けようと思ってたので、ベルト周りにワインダーが入ってたりという設定にしましたね。玩具心をくすぐれればいいなと思って。

――:タカオがジャケットをパサッとめくるシーンや、カイがワインダーをくわえるところも、とても印象に残ってます。

長森:『02』でできなかったことの反省を踏まえて、もっとこうしたいっていう欲望もたくさんあったし、気合い入れて作りましたね。大雑把な必殺技のコンテも、監督が切ったものもあれば、こっちでレイアウトから作ってこうしようっていうのもあったし。でも後半になると、そこまで必殺技をたくさん出していくスケジュールがなくなってきて、今までの物を使っていく形になりましたね。

長森:カイは炎属性だったから派手にしやすかったよね、聖獣も鳥だし! でも、主人公のタカオは竜巻で風属性だから、どうしても派手にしようがなくて(笑)。だから30話で2人が戦うときも、カイは新作の必殺技出してたけど、タカオは「ちょっとだけ竜巻の数、足すか」みたいな具合になってね(笑)。「なんか地味だよな、絶対カイの方が目立ってる」なんて皆で話してました(笑)

――:確かにそうですね(笑)。宇宙空間の演出もありましたけど、あれも監督さんの意向ですか?

長森:あれは監督の趣味です。あのシーンは『ガンダム』のアムロとララァとか、異世界で寝転がってるのは『デビルマン』だし。最後は太陽に彗星をぶち込むのも、「なんだろこれ?」と思いながら見ていて(笑)。コンテの段階で、監督はああいう脚色にしてて、演出や作画に関しては演出の方と、作画の見せ方はこっちでレイアウト修正のときに悪ノリでこうしようとか結構ありましたね(笑)。

長森:30話に関しては1つ前の29話から勝負が始まっていて、カイは敵役だから悪顔でいこうと自分の中で決めました。だから途中で目を赤く光らせたりして、でもタカオと全力でやりあった後からは吹っ切れた感じで、途中から表情が温和になっていくというのも意識して描いてましたね。最終話周辺のブルックリンとタカオのバトルでも、途中でブルックリンは人外になってましたけど、最終話のBパートになると吹っ切れて、爽やかな好青年になってたり。

――: なるほど。カイといえば「斬」や「愛だ……!」など、『Gレボ』では特徴のあるキャラクターになりましたね。

長森:カイに「愛だ……!」って叫ばせた監督は何を考えてたんだろうね(笑)。同じ話のカイで、もう原画とかも終わってたのかな? でもキャラクター崩れがひどいから、描きなおして欲しいとのことで2カットくらいきて。手を上げて目をうるうるさせてるシーンだったんですけど、戦いが終わって疲れきったカイが、何かを思ってうるうるしてるっていうイメージで描きました。そのあと通路を歩いて力尽きたところで、ドランザーが砕けるシーンありましたけど、あそこも自分の話数じゃなかったんです。でも、修正入れてくれとのことで直したりとか。割と一部だけ修正で描くようなことはしてましたね。

長森:あと、『Gレボ』ではっちゃけてたのは提供のカットかな。「どうせ何もないならなにか絵入れようよ」っていう話をシナジーのプロデューサーにして、こっちで描き出したのが始まりでした。ちょうど世界大会もやってたので、その話数のキーになるチームの集合カットを提供のところで出せばいいじゃないってことで。まあ、悪ノリですね(笑)。

――:ミンミンの変身とかも悪ノリですか。

長森:どうだろう。変身したら感じが変わるというのは監督から言われていて、打合せでロリ系なものとアダルトなものにしようという話になったのであんな見た目になったんですが、アダルトな方が思ったよりちょっと年増な印象になってしまいました(笑)。ミンミンの必殺技は原画は僕が描いて、変身シーンは完璧に『セーラームーン』を意識して描いたものでしたが、原画は別の方が描いていたと思います。ちなみにミンミンのシューターは、同じ頃にシナジーで『ぴちぴちピッチ』をやってたので、そのマイクのイメージで描いてます。

――:『Gレボ』から聖獣の登場が減ったと思うのですが、何かわけがあるんでしょうか?

長森:『無印』(『爆転シュートベイブレード』)のときは、普通に「ベイ」と聖獣のバトルをまんべんなくって感じだったと思うんですが、『02』からタカラトミーの方針で聖獣バトルに切り替わりましたよね。それがよくなかったのかはわかりませんが、『Gレボ』では「ベイブレード」の独楽のバトルをメインに見せていきたいという方針になりまして。聖獣はシンボルとしてしか出さなくなりました。

――:なるほど。聖獣といえばユーリのウルボーグに出てくる女性は(ウルボーグの)擬人化ということでいいんですかね……?

長森:あれは、監督にユーリの必殺技のところで雪女みたいな人を登場させてほしいと言われて、自分でも「え、ウルボーグって女なんですか!大丈夫ですか!?」と思いながら描きました(笑)。ユーリのノーヴァエローグとかブルックリンなんかの悪顔の必殺技は、メカ聖獣も描いてくれていた木村くんが原画を描いてくれました。僕には出せない雰囲気で、「いいなあ」と思いながら見てましたね。ユーリのシーンが何パターンかあったのも、監督のお気に入りだったからだと思います。バージョンが多いキャラは監督の好きなキャラだったんだなと思ってもらえれば(笑)。

line line line line line line line line line line line line line