長森佳容:
「最後まで手を抜かず ~ 3・2・1 ゴーシュート!!」

1999年、タカラから次世代ベーゴマ、「ベイブレード」が発売され、2001年のアニメ放送を皮切りに子供たちの間で大ブームを巻き起こした。今回は、『爆転シュートベイブレード2002』からシリーズを通してキャラクターデザインを担当している、長森佳容氏から当時の製作中の裏話に迫った。

2014年10月

取材・文/小坂 梓 協力/梅原 真名美

  • 長森佳容(ながもりよしひろ)
  • フリーのアニメーター。数々のアニメの原画、作画監督、キャラクターデザインを手がける。主な作品は「爆転シュートベイブレードGレボリューション」「メタルファイトベイブレードZEROG」「遊☆戯☆王ARC-V」など。

玩具のイメージは壊さないように

――:キャラクターデザインを多く担当されていますが、色彩なども考案されているのでしょうか。

長森:いえ、色彩には色彩設定の方がいらっしゃるので、直接関わっているわけではありません。『メタルファイトベイブレード』のキャラクターデザインを担当する少し前から、メインキャラクターだけはイメージを伝えて、そこから反映される場合もありますし、されない場合もあります。仕事をはじめたばかりの頃は余裕もあまりなかったので、線画だけでしたが。最近は提案させていただいてますね。

――:長森さんのデザインするキャラクターは、髪型に特徴があると思います。何かを参考にされたりしましたか?

長森:『ベイブレード』『ビーダマン』『爆丸』(『爆丸バトルブローラーズ』)などのホビーアニメは結構、記号化されたものが主流になっているので、何かを参考にする場合もありますし、自分が昔見ていたものの記憶をたどって作ったりしますね。『コロコロコミック』とかホビー物は玩具のイメージから来てるものもあるので、そのイメージは壊さないように、ちょっとどうかな?というところは少しいじったりします。まあ、参考にしているのは、自分が今まで見てきた映画とか作品ですね。あとは、なんとなく手を動かしてできあがったものが良ければそのまま使ったり(笑)。そのキャラクターを描いている時々によって、いろいろ変わってきますね。

――:『メタルファイトベイブレード』の破山キラについて、原作の足立たかふみ先生の当初のラフとは全く違ったキャラクターになっていましたが、何か理由があるんでしょうか。

長森:最初にラフがきたときは岩山美男(いわやまよしお)とペアできていて、ネーム書きで2人のレスラーっていう感じになっていたんです。けれど監督がそれはちょっと今までと同じようなキャラクターになるので、別の方向性にしてほしいということで。ごついキャラクターは美男がいますし、キラの方はちょっと違うキャラクターにならないかと言われました。じゃあ、キラはサイバーティックかちょっとボンテージっぽい感じにしようと。

長森:もともと、「中性的なキャラクターにしようか。暑苦しいキャラクターにはしたくないからな」というのが自分の中にあったので、最終的に、中性的でボンテージ風にしようと決めました。だから男でありながら女っぽさも出るようにちょっと口紅を付けたり、髪もラフでもらったのは単色の線画だったんですが、ボンテージ風にするなら、メッシュを少し入れようかと思いまして、まぁ3色くらいでいいかと適当に線を引いて当てはめていって、「うーんこんな感じでいいかなぁ」となって、できたキャラクターですね(笑)。

長森:あと、髪型はファイヤーヘアーか2つに分かれる形かで悩みました。『コロコロ』系は決まりごとが多かったりするので。決まりごとっていうのも誰かが言ったわけではないんですが、そういう所があるので。足立さんが書いたラフもファイヤーヘアーじゃないですか。だから、それはそのままファイヤーヘアーに。あとヘアーバンドのようなものを斜めにかけていたので、少しアレンジして細めに巻いた形にして、眼帯をスカウター形式にしようかっていうのは考えていたのでそうやってできたって感じです。

長森:原作の方ではだいぶ腰回り(の布地の面積が)少なかったので、「こんなのいいのかな(笑)」と思ったりもしましたが(笑)。アニメじゃ、さすがにあれは却下されるので(笑)。まあ、ホビー物は狙った露出とかそういうものはできないので、あえてデザインの時にやったりもするんですけどね(笑)。「ああ、やっぱ駄目なんだ。わかってたけどねー(笑)」「わかってるでしょー(笑)」という会話をすることがあります。それでも一応描いてみたかったというか、好き勝手やらせてもらってる部分もありますね。

長森:キラに関してはそんな感じで、美男は岩山美男ってぐらいだからごっつい岩みたいな印象で。監督が、フランケンや『ドラクエ』のゴーレムのような、モンスターちっくな印象にしたいということで、そのイメージで描きましたね。足立さんのラフの段階では普通の筋肉質な人っていう形でしたが、そこからちょっと猫背にしたり、上半身を大きくしたりしました。

――:「美男」っていう名前の漢字なのですが、なぜモンスターなのに美男というお名前をつけられたのですか。

長森:あれは僕の知らないところで(笑)。だいたい、発注案がくるときに名前って決まってないんですよ。キラがきたときも、ベギラドスっていう「ベイ」(現代版のベーゴマの略称)の名前だけで発注がきていて。名前は『コロコロ』の方で決まる場合もありますし、アニメのシナリオ打ちとかの段階で決まる場合もあるので、僕らは名前が決まっても浸透してない所が多いです。「そういえばあのベギラドスのキャラクターどうなったの?」って聞いて、少し期間があいてから知る場合も多くありますね。だから、「ああ、そんな名前になってるのか」っていう感じで、自分の中では馴染みが無かったりします(笑)。

長森:『メタルファイトベイブレードZEROG(以下ZEROG)』の海原兄弟でも、カイトはまぁ海系の「ベイ」を使うからカイトなんだろうけど、エイトはなんでエイトなんだろうとか(笑)。あと、カイトっていう名前も最近よく見るけど、本当にカイトでいいの?またカイト?って思ったりね(笑)。ちょうどあの頃だと『遊戯王』のライバルがカイトだったから、「うーん、どっちもカイトだよな。カイトカイトじゃん(笑)」って。まあ、名前はこっちで決められるものでもないので、そうなったのねって思うだけですけど。

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