三木一馬:
「メディアミックスは失敗しないことが大事」

電撃文庫と各作品、編集長と一編集として思うもの

――:電撃文庫が使いたい作品や作風、また今後ターゲットにしたい客層などはありますか?

三木:電撃文庫全体としては、こういう人に読んでもらいたいという細かいターゲット設定はないんです。方針としては、「面白ければ何でもあり」なんですよ。なので、電撃文庫で出すときは、その作品を面白いと思う人がいれば、それでいいんです。ただ、個々の作品で言えば、届けたい客層はいます。さきほどの『みーまー』で言うなら、6、7割が女性ファンでした。なので実写化するときもそれを意識したり、コミカライズも女性読者の多い『ヤングエース』さんでの連載でしたので、どういうアプローチがいいのか、マンガ編集さんと相談しましたね。電撃文庫は、面白いものなら何でもOKと考えているので、作風のこだわりがないのがこだわりかもしれませんね。

――:なるほど(汗) 。実は次に考えていた質問に、「三木様が考える電撃文庫らしさがない作品は何ですか」と聞こうとしていたのですが……。

三木:すみません(笑)。そうですね……今は皆さんそう思わないでしょうけど、『ソードアート・オンライン』は電撃文庫らしくないと思いますね。というのも、まず自分が電撃文庫で発売するときに気になっていたのは、題名に『オンライン』なんて付いていたら、普通はゲームのノベライズかと思われてしまうんじゃないか、という不安がそもそもありました。そして1巻でキリトとアスナはくっついてしまいます。ラブコメの鉄板ですらないわけです。他の作品では、主人公とヒロインはなかなか途中ではくっつきませんから。いまではありがたいことに多くの皆様に、『SAO』から電撃文庫らしさを感じてくださっているのですが、それは結果論でしかないと思っています。そういう意味では、どこにも属していなかった作品じゃないかと考えています。

――:題名の話が出たので、聞きたいのですが。多くの人が、ライトノベルの題名はどのようにして決めるのか気になっていると思うのですが、電撃文庫ではどのようにして決めるのですか?

三木:大体が、作者と編集者でお互いに案を出し合って決めていると思います。『禁書目録(とある魔術の禁書目録)』は、自分がいくつか出した中から、選んでもらった題名ですね。『シャナ(灼眼のシャナ)』もいくつかの中から、「これにしましょう」と提案をした気がします。

――:そういえば、『灼眼のシャナ』の主人公のシャナは、原案の設定は大人だと聞いたことがあるんですけれど、それは本当ですか?

三木:それ、みんな言いますよね(笑)。2巻でマージョリーというキャラが出てくるんですけれども、プロットの段階では、シャナは最初マージョリーに風貌が似ていて。シャナは、『贄殿遮那(にえとののしゃな)』という大剣を振り回すため、大きい大人の女性が大剣を振り回しても普通ですが、小さい女の子が大剣を振り回すと、インパクトがあるじゃないですか。だからそこは、「幼女にしましょう!」と言ったことを覚えています。

――:そういえば『灼眼のシャナ』もそうですが、三木様が担当されている作品は、『電撃文庫FIGHTING CLIMAX』にも出ている作品が多いですよね。ゲーム作品にも関わったりするのでしょうか?

三木:もちろん関わります。モーションチェックやセリフの監修、シナリオもチェックします。メディアミックスは、自分たちの作品を他業種の人たちと一緒につくる、ということなので、できる限りチェックをしていきたいと思っています。

――:ゲーム『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の『麻奈実』ルートシナリオも、三木様が描いていらっしゃると聞いたのですけれども……

三木:「それは、一番直しが多かったというだけですね(笑)。直した結果、元の原稿がひとつも無かったという……。他にも様々な部分で編集者は作品に係わっているのですが、ただ必ず作家さんにチェックをしてもらっていますね。やはり本というものは一人ではつくれず、チームでやるものだと思っていますので、作家さんと編集者の「面白そうなもの」の見せ合い、その確認と相談が大事かなと思います。

――:そんなに作品をチェックするとなると、日々読む作品の量はどのぐらいの量になりますか?

三木:そうですね……、月に3~5冊くらい担当していて、『電撃文庫MAGAZINE』の編集もやってるから……、1日平均2冊分くらいは読んでますかね。それを365日。

――:それほどの量を日々読んでいると、やはり読むスピードも速くなりますか?

三木:もちろん速くなります。自分は業界内でもかなり速いほうだと思います。それに、ただ読むだけじゃなくて、それを書いた作家さんと打ち合わせできるレベルまで読み込まないといけないので、気合いと根性でやってますね(笑)。

――:担当する作品は、どのように決められているのでしょうか?

三木:電撃文庫編集部の場合は、立候補制ですね。電撃小説大賞という小説賞で作品を選考して、編集部内でその作品を書いた作家につきたい編集を、立候補で決めています。ただ、1つの作品に多くの編集が手を挙げた場合は、相談して確定させます。

――:編集者としてのやりがいはなんですか?

三木:やはり結果が出ることでしょうか。手を抜いたりサボるとすぐに悪い方の結果が出てしまう業界なので、それがむしろやりがいに繋がっています。丁寧につくっても結果に繋がらないことも、もちろんたくさんあるのですが、それも含めて、とてもやる気が出る業界だなと思います。

――:今までのお話の中で、メディアミックスのメリットといえば、『伝えたい客層に届けられる』というのはお聞きしたのですが、デメリットは何かありますか?

三木:僕個人の考えでは、メディアミックスにデメリットはありません。届けるところを間違えなければ、かならずなにかしらのリターンがあると思っています!

――:最後に、三木様が考える、ライトノベルのあり方や定義などはありますか?

三木:ライトノベルと言われていますが、電撃文庫では、自社の作品をライトノベルと思って作ってはいません。「面白ければ何でもあり」なので、それがライトノベルかどうかはある意味どうでもいいんです。ただ、僕たちが自信を持って言えるのは、「電撃文庫の作品は面白い」と言うことです!!

(第21回 電撃小説大賞に関するお知らせ)

  • 電撃文庫が自信を持って世に送り出す、第21回電撃小説大賞受賞作が決定! 電撃文庫より、続々と発売されます!
  • 電撃小説大賞

  • 【 大賞 】
  • ▶『ひとつ海のパラスアテナ』
  • 著/鳩見すた イラスト/とろっち
  • 【 金賞 】
  • ▶『運命に愛されなくてごめんなさい』
  • 著/うわみくるま  イラスト/智弘カイ
  • ※大賞、金賞受賞作は、2月10日電撃文庫より発売。

  • 【 銀賞 】
  • ▶『マンガの神様』
  • 著/蘇之一行  イラスト/Tiv
  • ▶『いでおろーぐ!』
  • 著/椎田十三  イラスト/憂姫はぐれ
  • ※銀賞2作品は、3月10日電撃文庫より発売。

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