夜行性のドビュッシーズ:
「魂を揺さぶる音楽を目指して」

バンドって家族とも友達とも違うところがあって、距離感がなかなかつかめずにいたり

――:次の2枚目以降のシングル、『さよなら熱狂』、『オールドスポート』、『涙もでやしねぇ』の3枚は、1年間で3曲入りを3枚出す、と決めて発表されていたんですよね。

キクタニ:なんか……皆それぞれ音楽に対して考え方があったんですけど、バンド結成してから4人で集まっていても人間関係がちゃんと形成されてなくて。僕が一番バンドをやるうえで腹を括れるかっていうのが一番身に迫っていたというか。周りの人が亡くなったりもして……それでも音楽をやる意味があるのかとか、やっていいのかとか、周りからももちろん問いただされるし。言い方があっているかは分からないですけど、覚悟を決めなアカン時期が来てたんです。

キクタニ:そのときの活動が、4人で集まってスタジオ行って、ライブが決まったらライブしてというフワフワしたもので。僕は作詞・作曲者やから余計に曲に対する思い入れっていうのは強いですけど、まだそのときそこに対するコミュニケーションっていうのが4人でちゃんと取れてなくて、3人からすると単純に「なんで曲できひんのやろう」とか作詞のスピードが遅かったりというのはあると思うんです。でも、曲作りっていうのは井戸掘りみたいなところがあって、掘っても出ない時は出ないし。一人でいわば孤独な作業、孤独であるべきな作業でもあるんですけれど。

キクタニ:……というのをやっていて、今となっては作業の意味とかいうのがあまり伝わってなかったのかなという風に思うんです。

――:意味というのは、歌詞や曲を伝えることの意味ですか?

キクタニ:そう、納得できるものを出すっていうことを。曲とかはコードがあってどういう風に弾くか決めたらできるとか……そういう話じゃないから!って自分は考えるところがあって、だからメンバーに対して、このままバンドやっていけるのかなとも思ったし、曲や歌詞にどう思ってるんやろっていうのはすごく葛藤があった。

キクタニ:そこで僕から「このバンドはこうあるべき」であったり「歌詞や音楽っていうのはこうあるべき」っていうのをメンバーに伝えていって。歌詞も曲も井戸掘りではあるけど、作らないとバンドは走らない。自分は自分で全力を出すから、全力でサポートしてくれという形が決まって、じゃあ年間にどれくらい曲が出せるのかという限界を試していこうと。もたもた活動していても多分解散しちゃうから、それなら終わりを先に決めてしまった方が火がついていいのかなと。

マーシー:その「年間3枚出す」って言われたのも最後の3枚目を出すときぐらいのことで。しかもそのときも、けっこうレコーディングができるのかというぐらい煮詰まって、追い詰められていたときに聞かされて……でもヨシッ!って火がついて(笑)。

カガラ:レコーディング当日に歌詞ができていないみたいなこともあったりして、でも結局間に合わしてくれてということも。

――:ではその、「バンドはこうあるべきだ」というのを聞いた側としては、何か変化はあったのでしょうか。

カガラ:僕自身では多分最初から、キクタニが音楽を続けている限りずっと一緒にやっているんやろうなって、勝手にフワフワ思っていたりはして。で、リズム隊の2人が入ってきてくれたんですけど、入って2年目ぐらいにその大きな節目みたいなものがあって……、そこでやっと4人でちゃんと「夜行性のドビュッシーズです」って言えるようになったのかな、という意識はあります。より一層深まったというか、バンド自体が危ない時期もあったので。

マーシー:もともと僕らリズム隊が入ったときはキクタニくんが曲を作ったりという根本があって、それをカガラくんが外に発信していく2本柱みたいな感じで。そうなると僕らのすることは?っていうのが、けっこうフワフワはしていたんですよ。で、そういったところも、こう問いただされたりもしましたし。バンドって家族とも友達とも違うところがあって、距離感がなかなかつかめずにいたり。

マーシー:そこでもっと深く関わって音楽につながる人間の部分っていうのを探求していかなあかんし、音楽的な部分だと相手が何を弾いているのかというのを一音一音確認していくようにしないといけないな、っていう風に思って……、そこからたぶん、音の聞こえ方とか接し方というのが変っていきました。

カガラ:思ってはいても、言いにくかったり気をつかったりする時期というのがそれまでで、今はそれはだいぶ無くなってフラットな感じ。曲を作るときはそれだけに集中できるような関係に、前よりもなっていっているんじゃないかな。

――:そうやってCDを制作したことで、バンドにとって良い環境になったんですね。

カガラ:今思ってみれば、ですけどね。

キクタニ:楽器持って人が集まればそれはバンドやし、結局バンドって、軸になるものが無いと烏合の衆なんですよ。長いスパンでやっていくにはであったり、どういうものを作りたいか、という理想に近づこうと思うと、やっぱり甘っちょろい関係だと絶対に無理なので……、マーシーが言ってたように、友達でも家族でもない不思議な関係性っていうのを結ぶ、すごく強いものが無いと進んでいかないので、とにかく結束力が欲しかったんですよ。曲を作るって言うのは、自分のやりたいふんわりしたものを形にしていく、楽しいけど同時に苦しいところでもあるから、たとえば曲作ってるっていいながら僕が家でゲームしていても誰も分からないけど、あいつは絶対曲をつくっているという信頼関係が必要で。あいつがやるなら俺もやるという。とにかく軸になる人間が覚悟を提示しないといけなかったり、できなければ解散というふうにしなければな、と。

感情の極致に近づけるように努力をしています

――:3rdシングルの『オールドスポート』は、バンドのサウンドが一気に変化していた印象です。そうやってバンドの環境が変ったこととサウンドの変化に関連はありますか?

キクタニ:そのへんは時期が被ってるんじゃないかなと思いますよ。

――:どのように変りましたか?

キクタニ:作曲者として基本的には歌詞至上主義なところがあって、結局なんの歌なのかっていうのを大事にしているので、単純にメロディが良いというだけなら歌は要らないし。歌が入ることで音楽の意味性が生まれて、口ずさむことができたり。そのためによりバックサウンドのレベルを上げたいっていうのもありましたね。

――:なるほど。

キクタニ:あと、なぜ年間3枚なのかというコンセプトもあって。『最低な夜 悪くない朝』という3曲入りのCDから、1年空いて3枚出しているんですけれど、それをてっぺんに置いて、それぞれの曲を派生させていくという風にしてるんです。だからそこまでしっかり考えていたわけではないですけど、最初の1枚も、たとえばロックチューンばかりじゃなくてバランスのいい3曲にしようと考えていたんです。「3つ数えて」みたいなロックチューンと「溜息と太陽」ではガレージロックリバイバルであったり、90年代のUKを感じるようなもの、「群青」では日本語ロックとUKのリズムを意識していて。だから簡単に分類すると「ロックチューン」、「バラード」、「パンクロック」というような。

キクタニ:だから3枚出したシングルも、自分のなかで進化の系統樹のように、最初の曲に沿ったものにしようとしたんです。「オールドスポート」は「溜息と太陽」の派生、「さよなら熱狂」は「群青」の派生で、延長線上にあるような感じなんですね。

――:そう聞くとたしかに納得できます。

キクタニ:で、『オールドスポート』ではさらに音楽性の幅を広げようとしていて。もともとアートワークも全部自分でやりたいタイプなので、今までは自分たちの写真をジャケットにしていたんですけど、洋楽チックなシングルとして作りたくてタイトルも英語にして。自分たちのサウンド面を広げるというのは意識していたかもしれないです。

――:続くシングル『涙もでやしねぇ』にもその影響はありますか?

キクタニ:曲を作っているときに、すごくメンバーに指示を出すようになったのが、その『オールドスポート』なんですよね。「こうじゃないと嫌だ」、「こうであるべきだ」っていうのをメンバーそれぞれのパートで任せていたんですけど、どんどんもっと自分で言っていったり、ある程度作ってこうしてくれ、と言いはじめて。それで、より「こうした方がいいんじゃない?」とかお互いに協議して話を詰めていくようになったから、音楽という意味ではすごく成長できたのかな。

マーシー:よりルーツを掘り下げていってできた曲が『オールドスポート』で、『涙もでやしねぇ』ではルーツをもっと分かりやすく出していったんです。

――:そうやってバンドが歌詞をより一層後押ししていたように感じました。

キクタニ:歌詞至上主義とはいえ、やっぱりバンドやし、もちろん音楽好きなので、そこはカッコいい曲にしたいなぁって。

――:それぞれのパートの個性が強くなったんじゃないか、とも思ったのですが。

キクタニ:どうかな(笑)。とにかく僕は、曲のイメージであるとか、理想をちゃんと話せるようになった。あとは、『さよなら熱狂』から3人が歌詞を読みはじめたんですよ。

――:読んでなかったというのは……。

キクタニ:自分らのやってる意味が分かってなかったというか。僕もなかなか照れくさいので、「わかるやろ!」みたいな感じで何も言わなかったんですけど、このままやったらアカンと思って(笑)。この曲はこういう意味で、分からんかったら聞いてこい!っていう風にして、どんな時にどう思ってこの曲をつくったのかというのをしっかり伝えるようにしたんで。だから『オールドスポート』に入っている「何処へも行けない」という曲は、タイトル通りにふらふらした感じになっていて。

――:曲の理解が深くなったんですね。

キクタニ:僕らのテーマの1つに「泣き笑い」っていうのがあるんです。最悪すぎて笑っちゃうとか、楽しすぎて泣いてしまうとか。そういう感情の極致に近づけるような努力をしていますね。

line line line line line line line line line line line line line line line line line line line