山本慶(溺れたエビの検死報告書):
「『溺れたエビ』の魅力に迫る!」

エビ独特の世界観を表現するための舞台演出

――:舞台のステージングを山本さんはこだわっておられるとお聞きしましたが、具体的にはどのような事をされているんですか?

山本:今ちょっとずつやっているのが、舞台の上の楽器を出来れば、いわゆるギターとかドラムとかってのを出来るだけ止めたいんですよ。かと言って全部の楽器をターンテーブルとか打ち込みの機械にしたいと言っているんじゃなくて……。楽器・演奏方法・舞台演出としての機能が全部加わった様なものを作って出したいんですよ。つまり……例えば舞台の上にイソギンチャクとかサンゴのオブジェがあったとしますよね? それを演奏するような……。

ギターとかドラムって人間が使うために設計されているデザインじゃないですか? 物理的に音がちゃんと鳴って且つ、人間の体にフィットするように作られてる。エビがもし進化して知能を持って文明を持っていたりしたら、エビ独自の世界観があるから当然、人間の使う楽器と同じデザインにならないと思うでしょ。エビでやってることっていうのは、その世界を人間である僕らが空想していかにそれを再現するってことなんですよ。ただ単に見た目が変なだけじゃなくて、ワシャワシャしながら弾ける物だとか、そのパフォーマンス性と創作的意味合いを兼ね備えた楽器が一番理想なんですよ。

――:うーん……ライブの際に長のアップライト・ベースの弓についてた、エビのハサミを彷彿させるギザギザみたいな感じのものですか?

山本:あれはね、見た目だけで機能的ではなかったんです。重くなっただけなのでやめました(笑)

――:そこが2つともあるようなものを次は作ろうとしているってことですか?

山本:さっき言った多チャンネル実験的ライブをやった時の話になるんですが、自作のサンゴみたいな形をしたオリジナル楽器を作ったんです。これはまだ試行錯誤中なんですけど、100円ショップとか駄菓子屋さんに売ってるトゲトゲのゴムボールにセンサーを取り付けてシンセドラムに繋げて、これを叩いたらこの音が鳴るっていう装置でして。舞台装置と楽器が融合してエビの世界に合致しているもので、なおかつ機能的で意味合いのあるものっていうのはまぁ……これみたいな感じですよ。

僕自身は楽器としては、シンセとかDJ用機材とか打ち込み用機材とか、そういうものに未来性を感じているんです。プログラムすれば理論上どんな音でも出せるし、新しい表現を別の機材も取り込んで出来てしまう。そういう意味では使い勝手がいいんです。お客さんの中には単純に音楽で踊れたらいいと思う人もいるのかもしれないけど、僕らは上手くパフォーマンスでも魅せれたらいいな、もうちょっと新しい表現で、違う魅せ方もできるんじゃないかなと思ってるんです。そういうところからいろんな発想を得ていって、今のエビがあるんですよ。

音楽へのこだわり

――:1stアルバムの「ワシャワシャ!! グギャギャギャギャ!!!」の中で、位相をずらす様な技法を使っているとお聞きしましたが……。

山本:アレは本当は2ndアルバムに入れる予定の曲で、2ndではその技法を沢山使うつもりで作ったんですけど、結局あの曲だけですかね、1stでは。あれには1つ欠点があって、ステレオ再生じゃないとダメなんです。モノラル再生だと打ち消されて、その音が鳴らないんですよ。

――:他に曲でこだわっている点というのはどんなものがあるんですか?

山本:特に1stの録り方は滅茶苦茶こだわってるね。やっぱりあのシンフォニックな曲達っていうのは実際にはオーケストラでやってるわけじゃないし……、少ない人数でどう再現しようかな……ってなって、暗中模索で勉強しながら凄い時間をかけて完成させたんです。完成形をこうしたいっていう明確なイメージはあったんですが、そこに行きつくために、研究しながらですごく苦労しましたね。

――:まだ収録されていない曲、「Shrimpping!」をライブで行う際のエビたちの独特な動きは山本さんが考案したものですか?

山本:そうですね。あれが多分、溺れたエビの楽曲もパフォーマンスも含めて1番体現されてる曲やと思います。僕の思うエビの作品の目標というのが、演奏方法・音楽の内容・動きなど全てのパフォーマンスを綺麗に融合させる事なんです。単に超絶技巧が出来るとかそういうのとは違って、ちゃんとテーマに見合ったテクニックというのがあって、さらに視覚的にも意味が全部がきちっと融合してるっていうのが1番理想なんです。「Shrimpping!」が今のところ一番出来てるかなと思ってます。「Shrimpping!」自体は造語なんですよ。あんな英語はなくて、日本語に強引に変えたら「エビってる!」みたいな感じ(笑)

――:そうなりますよね(笑)

山本:僕、数年前まで小さいエビを飼ってたんですけど、それをジぃ〜っと見てた時、エビの頭の下に足がピャーって何本も出てるんですけど、ずっとなんか、ちょこちょこちょこちょこ動きまくってて……。

――:ワシャワシャして。

山本:そうそう!(笑) 餌のところに止まってモゴモゴしてたり、他の足をバタバタさせたり。その細かく動いて跳ねているイメージを曲に起こして。それをなんとか人間の手足で表現すると、ワシャワシャー!って感じになるよなとか考えて「Shrimpping!」は作りましたね(笑)

――:「アノマロカリス」や「アルテミア・ノープリウスが泳いでいる」などの楽曲にもエビ関連の名前が付いていますが、いつもエビからインスピレーションを得て楽曲を作ってらっしゃるんですか?

山本:ケースバイケースです。曲が先に思い浮かぶこともあります。収録5曲目の「アノマロカリス」はヴィジュアルから着想しました。アノマロカリス(約5億年前に実在した節足動物)の絵が有って、その姿にインスピレーションを得て作曲しました。アルテミア……いわゆるシーモンキー。小さいエビの仲間なんですけど、あれも曲名は後付けですね。曲が先にあって、そのイメージに合うキーワードを選んで付けました。

――:今、聞いてて思ったんですけど、舞台での音楽・パフォーマンスなどの融合を目指されているということは、CDアルバムはどういうスタンスで作られているんですか?

山本:うん。そこは難しいところで、「Shrimpping!」が今のところ一番難しいんです。本当は1stに入れようと思ってたけど入れられなかった。ライブ主体でやっている事を曲として録音しても、全然面白くないんですよ。やっぱりあれはライブで体感してもらう用の曲だから……「Shrimpping!」はアルバムに収めるには相当アレンジが必要だと思ってます。だから全部とは言いませんが、同一曲でもアルバムとライブでは別物だと線を引いて考えてます。」

――:なるほど。曲ごとにコンセプトがあると言ってらっしゃるのもそういう部分に関係しているんですか?

山本:多少ありますね。ただ、溺れたエビの場合、情景やイメージを描写するってことはしてるけど、そこにはメッセージ性って一切ないんですよ。

――:そうなんですか!

山本:溺れたエビの曲には詞や歌があるわけじゃなく、視覚と音でお客さんに踊ってもらったりだとか、何かを感じて貰えれば良いなと……。最初から僕には言葉でもってメッセージを伝えるって考えは、溺れたエビには無いんです。ある意味ビジュアル重視……ですか。言葉の意味だけで言うなら、ビジュアル系って言っても間違いでは無いかもしれないですね(笑)

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