パンダの穴:
「『いらないもの』は意外と人を幸せにする」

パンダの穴 = 自由に暴れられる場所

――:サメフライなどは突飛的な発想で出来た商品といった印象があるのですが、こういった商品が出来た理由や経緯などは?

伊藤:これが出来た理由をよく聞かれるんですけど、深い理由はなくて、打ち合わせ中の落書きなんです。

飯田:全く違う打ち合わせをやっていて、その会議の途中になんか落書きをしてるんですよ。それが、企画を始める多分1年半か2年くらい前の話です。それから、ガチャのプレゼンがあるっていうので、あれ面白いから出してみようかって言って出したら通っちゃったので、マーケティングもへったくれもなく……

伊藤:打ち合わせ中に落書きしちゃう癖があるんです。だから何をもってこれが生まれたのか全く分からない(笑)。 前の晩にエビフライでも食べたんですかねー。これをタカラトミーアーツさんが気に入ってくれた理由も未だによく分からない。理由はあったと思うんですが、もう忘れちゃいました。

飯田:これプレゼンした時に、タカラトミーアーツの事業部長さんがこれは売れるって言ったんですよ。そこまでとは僕も思ってなかったんですけども、本当に売れたんでびっくりしました。でも、造形は相当頑張りました。サメの造形を実際に作って、衣を被せていきました。あと色についても色々研究して、安いものから高いものまで色々なカツを買ってきて、検証してみるとやっぱり衣の色が全然違うんです。

伊藤:最終的に、ちょっと高い揚げ物屋さんのはこんな(サメフライ)なんですよ。スーパーとかだと油染みてて、もっと色が濃いんですよ。揚げたてできちんと油切りされたフライがこういう感じ。

飯田:マーケティングはしてなくとも、リサーチというか、ここに至るためには、いずれにせよ色々考えてはいます。Zoo Zoo Zooも実は、こう見えてもポーズとかもかなり色々考えたんですね。手の形とか、あと担当者が動物園でビールを飲みながらゴリラを観察したり(笑)。

――:本当に、その動物が動けるポーズの範囲内で…

飯田:そうですね。死んでいるように見えないように、ちょっとだけ指が曲がっていたりとか、微妙なところに気を遣いました。その辺がちょっと変わるだけで全然見え方が違うようになるんですね。死んでいると、手がもっとだらんとなっていて、寝ている手とは違います。そもそも当初の案ではもっと違う動物たちだったんです。でも鳥とかだとどうしても死んでいる風にしか見えないので、色々タカラトミーアーツさんと相談しながら決めました。

――:そこを意識して作るからこそ、ちょっと「くすっ」っと笑えるような。

飯田:そうですね。そういうのをちょっとずつ積み上げて、でもそういうのはあまり見えないようにして、さりげなく纏めるというか。

――:他の商品のそういった経緯などは?

徳井:最初にガチャの企画を考えてくれと言われて、あまり媚びていないキャラを作りたいと思い、フルーツゾンビが思いつきました。元々、ゾンビが好きだったんですよ。

――:自分の好きなものが派生していったような?

徳井:プレゼンする時は小難しいことを語っていたのですが、よくよく考えてみたら、ゾンビが作りたかっただけだったのかなぁと最近思ってます(笑)。あと、僕は他の商品と差別化するため、フルーツゾンビのPVみたいなものを作ってYouTubeにアップすればガチャ以外のところで広がっていくのではないかと思い、映像を作りました。実際売り上げに反映されるかどうかは分からないですけど、ガチャでちょっと新しいことを試みることを考えました。

森:僕は……まずこのガチャのプレゼンコンペの案を出す段階でキャラクターものは難しい気がしたんですよ。だからキャラクターもの以外でなんか、僕ダジャレが好きなんで、ダジャレでなんかないかなと考えてたら「考えない人」が出たっていう感じですかね。

飯田:彼はコピーライターなので言葉からアイデアを発想します。デザイナーとは違う視点なんですよね。でも実はそのガチャの場合、ネーミングというのは、すごく重要なんですよ。そこでガッと掴まないと。

――:その点で、他と違って簡潔的かつ、惹きつけられる名前に感じられるのですが?

飯田:ネーミングはやっぱり相当こだわっています。でも割とサメフライは直してないし、考えない人もZoo Zoo Zooも……。チラリーダーは少し直しました。最初はデスクトップチアガールっていう名前だったんですよ。で、もうちょっと面白くなるんじゃないかなって思って、チラリーダーに。それぞれのキャラクターにもちゃんと名前を考えて。やっぱりコミュニケーションが早いじゃないですか。チラリーダーって言うと。

(総務) 澤:コミュニケーションの話で言えば、先日こんな話を友人から聞いたのですが、友人が入院中に隣のベッドに運ばれてきた三十歳前後の男性とその奥さんの話で、奥さんに駄目だって言われていたのにもかかわらず、自転車通勤していた男性が車と衝突して重症で運ばれてきたんですって。その時私の友人は隣のベッドで、手術を受けるのを待ってたんですけど、カーテン越しに隣の会話が聞こえてきて、駆けつけた奥さんに「だから言ったじゃない!」って散々その男性が叱られていたんです。でもその直後に男性が「これ見て。手に入ったんだよ」ってなにやら奥さんに見せたら、その瞬間奥さんが「すご~い!すご~い!これどこでー!」って、それまでの争い事が一変して微笑ましいムードに(笑)。

一同:(笑)。

澤:何が手に入ったんだろうと思ってこっそりカーテン開けて覗いたら、なんとサメフライだったんです。

伊藤:いらないものは意外と人を幸せにしますよね。これ、一個シークレットにしたんです。なぜか一個だけマンタっていう。軟骨魚だからいいかな、くらいの軽い気持ちで作ったんですが、たぶん厳密に言うとサメじゃないんです。それに関して、「なんでシークレットがサメじゃねーの?」って、ツイッターで逆に謎の広がりを見せてましたけど、またそれも面白かったりして。

――:じっくり考えるより日常でぱっと出たほうが面白くなりやすい、っていうことは多々あるものなんですか?

飯田:多分それはクリエーターの人たち皆違うかもしれないですね、アプローチが。ものすごく考えて捻り出す人もいるし、サメフライみたくなんか知らないけど出ちゃったみたいな人もいるし。それは皆個性が違うんですよね。フルーツゾンビは、これも個人の思いしかないんですよね。これがあっても、誰も何もメリットないですから。でもやっぱりこうやって頑張ってちゃんと作ると、反応して下さる方々がいて。別にこれが世の中にあっても無くても、誰も困らないから。本当に一人一人、皆と違うアプローチでやってるところはいいかなと思っています。とにかく僕の仕事としては、クリエーターの目の前に、何の障害物もなく、でっかいフィールドがあって、存分に暴れていいよって感じで考えています。

――:チラリーダーは女性のクリエーターとお聞きして驚いたのですが……

飯田:でも、これ女性のクリエーターならではで、逆に男性が作っていたらこんなふうにならないんですよね。もう少しマニアックな方向に行っちゃうんですよね。

――:行き過ぎるとまた、シュールな感じも薄れちゃいますし、意識的にそこと距離を取ってる風には感じられますね。でも、自由にやっている上で、あまりマーケティングを考えずに作っているのに主な層として女性の方々にウケているのが意外な点では?

飯田:サメフライが最初ツイッターで可愛いって言われるのが全く解らなくて、これ可愛いんだ……っていう。逆にそれが勉強になりましたね。だから、僕の持ってる若い人に対する感性と実際の若い人の感性とでズレが生じていて、今の若い人はこういうのを可愛いって言うんだって、それは本当に勉強になりました。Zoo Zoo Zooを可愛いって言うのは解るんですけど。

――:身近な物の方が、アイデアって浮かぶんですか?それとも全く違うものを取り入れたときにぱっと浮かぶものか……

森「僕は身近なものですね。身の回りにあるもの。ロダンの考える人自体は皆知っているじゃないですか。そういう意味の、身近なものですね。

――:「考えない人」のポーズはなぜこういったものが?

森:ポーズは……思いつきですね。これ(考える人が乗っている石)さえあればいけるというコンセプトなんで。これが考える人の象徴なんで、これで遊べばなんとかなるっていう。

飯田:ツイッターで一番反響がすごかったですね。

森:それがきっかけで広まったんですよね。

――:ツイッターでよく拡散されていますが、そういうのを意識されているわけではなく?

飯田:最初は全く意識していなかったですね。なのにそこで、どーんとヒットして。全く広告せずに広がるのはこういうことなんだなって実感しました。ツイッターで広まった後は割とツイッターを意識するようになりました。例えば展覧会で必ずポスターを作るんですけど、みんな写真撮るじゃないですか。なので、僕らが完全にコントロールした形のポスターを作り、それを写真で撮られて、それが出回っていく……そういうところはすごく考えながらやっています。

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