高畑正幸:「文具王20000字インタビュー」  

文具ブームについて(世代)

――:そうですね、今のお話は時代的なブームでしたけど、世代的な部分もあるんじゃないのかなと思いまして。中学生くらいがお金かけられるのって文房具とかになるじゃないですか。それっていつの時代でもそうなんじゃないのかなって考えて。そうなるといつの時代も、中学生は文房具ブームではないのかな? たとえばゼミの先生に聞いたことなんですけども、「昔はかみつきばあちゃんが流行ってたよ」って。

高:あー持ってるよ。僕と同世代くらいですね先生。

――:さすがです(笑)

高:世代的にっていうことで切るんであれば、学生である間はある程度、そういう共有ができるんですね。社会人になってからは、文房具は本当に使わない人は全く使わなくなっちゃうんです。でも小学校とかだとオモチャの次に自分の意志で選んで買えるプロダクトっていうと文房具とかになるわけですね。なかなか服とかよりも、文房具とかのほうが自分で選んだ感が強いっていう部分があって。で、学校に持っていける、友だちと比べることができる。最初のブランドだし。僕らの頃は、まだ制服の学校とかも多かったので、ファッションで勝負はしないですし、ファッションで勝負できるほど、お金皆持ってない。そうなると文房具は学校に持って行けて、怒られないものなんで、持っていって勝負ができる。どこの鉛筆を使ってるのかとか、どんなイラストの、どんな柄の筆箱を使ってるのか、そういうのはやっぱり皆気になりますよね。なので、当然そういう意味ではブームになる。それが中学・高校くらいまでは。

――:やっぱり。

高:で、小学校の頃は単純にどれが好きか、どれが良いか、という話なんだけど、中学や高校になると受験とかが出てくるので、どのノートとかを使うとよく覚えられるとか、なんか単語帳をどうやって使うか、とか。どちらかというとハウツー関係のほうが増えてきて皆アレコレやるわけです。赤いシートかぶせて覚えるとか。そういうのって、皆同じ経験があるから乗るじゃないですか。単語カードの話とか。たとえば、ボールペンは、赤よりもオレンジやピンクのほうが、赤いシート被せる時にはちょうどいいとかいう話とかは、学生の間では共有できるわけですよ。

――:たしかに、大学生間でその話はできないですね。

高:大学生になってくると、ちょっと幅が広がるので、使わない人はあんまり使わなくなるし、使う人は特に偏ってくるので。だいたい高校生くらいまでは義務教育っていうのもあるから、絶対使うよね文房具。

――:そうですね、絶対使いますね。

高:絶対に使う。そういう意味で、高校生までが使うものというのは、ある程度皆で共有できるっていうのがあるのでブームといえばブーム。ブームというか、共通の話題になりやすい。

――:なるほど。共通の話題が、ある意味少ないってことでもありますよね。

高:そう。特に最近は多様化していてるから、やっぱり同じ話題がなかったりするけど。たとえば小学校での子どもたちに、クルトガがものすごい流行ったりとかしてたら、皆、大人になっても「あー。芯がまわるシャーペン、あったあった」って、言えたりするわけです。そういうのは共通の話題にはなるので、ブームと言えばブーム。そういうふうになりますね。

――:たしかに。ブームというよりも、少ない話題の1つって感じですね。

高:うん。で、少ない話題だし自分たちでそこで選べるからブームになっちゃうんだろうね。だから、その「このシャーペンすごいよ」って誰かが持ってたら、「私も欲しい」ってなって買っちゃうみたいな部分が確かにあるので、そういう意味では、ブームとして成立していると思います。

文具から見る個人

――:そうですね。で、ブームがあるってことなんですけど、文具を扱う人から、扱う文具からその人の特徴が見えるかな、っていうのをちょっと考えてまして。

高:ほう。

――:たとえば、ラミーを使ってる人は、こういう傾向があるとか、こういうタイプだ、みたいなのがあるんじゃないのかなって思いまして。ブームとかになると余計、文房具を選ぶ人が増えてくるんで、ブームであればあるほど、そういう傾向が出てくるんじゃないかなって考えているんです。何か、傾向は見えますかね?

高:んー。単純にはやっぱり言いづらいので、なんていうのかな。それを何かの形で定量的に評価するのは非常に難しいかなっていうふうには思うんですけど。

――:そうですよね。……たとえば、ルイ・ヴィトンとかを使う女の子はこんなタイプだみたいなのが、文房具のブランドでもそういうのがありますか、ということなんですけども。

高:それはあると思いますよ。

――:あります?

高:それは、どちらかというとマーケティングみたいな話。感性マーケティングっていう世界なんですよ。昔はもののマーケティング、ものを誰が買うのかっていう話をするときに、人を、性別とか年齢で分類してたのね。女性の二十代~三十代とかいう、そういう分け方をしてたんだけれども、最近はそうではない切り口のマーケティング手法が、ちょっと前の話だけど流行ったりして。それは何かというと、無印良品で買う人って、皆こんなものを持ってるよねー、みたいな。

――:ほうほう。

高:無印良品で、なんか買い物をよくする人、なんか、服が無印良品の人って、家に帰るとこんな感じで、とか。やっぱブランドとして、近い遠いっていうのがあるんですよ。

――:たしかに。

高:たとえば、ユニクロで服を買う人とか、無印で服を買う人とか、たとえばそういうので、さっき言ったルイ・ヴィトンのバッグを持ってる人って、別に無印のノートとかに興味なさそうじゃん。

――:そうですね(笑)

高:世の中のデザインの中では、割りと近いジャンルなの。っていうふうに分類できる「エモーショナルマトリックス」ってのがあるんですよ。世の中をヤング・アダルトっていう軸とコンサバかアグレッシブっていう軸。

――:保守と革新ですね。

高:そうやって分けていったときに、落ち着いたジャンルで年齢高そうなものとか、低そうなものとか、子どもたちの好きそうなものとか、そういうのって分けていけるんですよね。それって、大人になろうが子供だろうが、感性はそういうふうに分類できるので。

――:あと、本当に皆文具選んでるのかなーと、ちょっと疑問に思いまして。名も知れない百円の、百均で買ったボールペンを使ってる子ももちろんいるわけで、僕みたいに例えば文具を選んでるタイプはきっと少ないから、そうしたときに選んでなければ、じゃあ考える必要はあるのかな、と思いまして。選んでると思いますかね?

高:どうなんでしょうね。だから、意図的に、それを言葉にして分けているかどうかはわからないですけど、でも、やっぱり形とか色とか外観上では選んでるんじゃないんですか。機能で選んでるかどうかってのは別問題なんで、そういう意味では、アレだと思うけどなー、と思いますよ。デザイン的なものなら皆、選んでるのかなってことですよね。

――:文房具好きな人とは、どんな文房具を選んだとか、この消しゴム面白かったよ、とかいう話はするんですけど、全くそういうの興味ない人とかを見ると、何か考えがあって筆箱の中を埋めてる様子はなくて。そうしたときに、本当に皆ちゃんと選んでるのかな? と、けっこう日々疑問に思うんですよ。

高:でも、それはあれなんじゃない? 服を選ぶときにさ、ブランド名を意識してる人もいるけど、意識せずになんとなく服を選んでる人ってのは、皆なんとなくだけど、最終的にはその人らしい服しか買ってないよね、っていうのはあるんじゃない?

――:たしかにそうですね。服がまるまる被るってことはあんまりないですもんね。

高:「なんかわかる」っていう(笑) そういう感じが、多分あるんじゃないのかな。喫茶店一つでも、「スタバの人」と「ドトールの人」は違うよね、っていうのも、持ってるものが多分違うよねっていう。

――:なるほど。その通りだ。

 

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