高畑正幸:「文具王20000字インタビュー」 

「文具王」と名乗る唯一の人間。それが高畑正幸。今回はその文具王に文具王への成り立ち、昨今の文具ブームからオススメの文具まで、文具の魅力について余すことなく話を聞かせていただいた。

2013年2月

取材・文/安原崇史 協力/高良平・西口絵梨

高畑さん
  • 高畑正幸(たかばたけまさゆき):テレビ東京系列の名物番組「TVチャンピオン」の全国文房具通選手権で三連覇を果たし、文具王の名を欲しいままにした。その後サンスター文具株式会社に入社し、現在では同社とプロ契約をし個人活動を行なっている。きだてたく氏、他故壁氏らと共に文房具トークユニット「ブング・ジャム」を結成し、イベントを開催するなど精力的に活動の幅も広げている。

文具王個人史

――:まずは、なんで文具に興味を抱かれたのかなっていうところから。

高畑:小学校のときからですね。そこから足が洗えなかった、っていろんな本に書いてますけど、例えば理科の授業とかのときに取ってたノートとかが、まだあるんですよ。

――:いつのですか? 小学生?

高:5年のノートって書いてるから5年生なんでしょうね。

――:おお。

高:「食塩水」とか、汚い文字ですが。途中で動く。

――:すごい。紙芝居みたいな仕掛けですね。

高:こういうのを、授業内にやるんですよ。

――:先生から「参りました」ってコメントが(笑)

高:その場その場で作らなきゃいけないので、材料は常に大きなペンケースというか、釣り道具とかが入っているような、大きい工具箱みたいなやつに入れてましたね。中にいろんな材料とかと一緒に、ハサミとかノリとか色んな物を入れといてそこでやる、みたいなことをやってました。小学校の時はそんな感じだったんですが、中学校になると、だんだん同人誌を書く奴とかいろんなのが出てきてくるんだけども、僕は漫画とか絵が書けない。物語も作れない。エッセイとかそういうのしか書けない僕が何をやっていたかというと、そのときに書き始めたのが……。

――:……文具紹介ですね。

高:そう、その文具紹介をずーっとやってて、30年ぐらいしていると、僕になるっていう感じですね。そんなことを、今でもやってます。

――:すると、もう中学生くらいから同人誌を。

高:今は皆さん同人誌を作るなら、ちゃんとした印刷屋さんに入稿して作るのが当たり前になりましたけど、当時はそんなにお金をかけるではなくて、皆だいたいコピーで作ってホッチキスで製本して、製本テープを貼って仕上げるみたいなことを普通にやっていたんです。そのとき僕は、友達が作った雑誌を製本する係みたいな感じ。そういうのは上手い、みたいな感じだったけど、まぁ自分が表現する内容がないというのもなんなので、文具紹介みたいなの作って間に入れて貰ったり、あとは生徒会報とかそういうものの隅の方に、文具のコラムとかを入れて貰ったりとか、そういうことをずっと学生の頃やっていたんですね。

――:就職したのも、そういう積み重ねから?

高:なんだろうな。その時その時に出会った人に、次のチャンスをもらうことが多いんです。なので実は、就職活動っていうのは基本的にしてなくて、TVチャンピオンに出たら、決勝戦に残ってたのが、文具メーカーの部長で、ずっと話をしてたんです。「どんな学校で、どんな勉強してんの」「えー、これこれで」「どんな勉強してたの」「あー、機械工と、これとこれを勉強してたんですけど」「どんな文房具好きなの」「あー、こんなのが好きですね」「これどう思う?」「うーん、この文房具はこうですね」っていう話をしてたら、それがまぁ面接試験と同じじゃないすか。「作ってみたいか」とか言うから「作ってみたいです」って言ったら「来る?」って言われて行ったっていうね。

――:凄い出会いですね(笑)

高:基本的には、学生のときのチャンスを活かせ、っていう話で。色んな所に飛び込んで話を聞きに行くだけでも、そこの人達は君らの存在のことなんて知らないから、まずそうやって出てくるだけでも1歩リードだし。例えば何かを頼まれたりとかしたときに、そこで100じゃなくて110、120っていう感じのことをやると、その20の部分で、「じゃあ、次何かやってみますか?」っていう話が来たりするのね。そういうので広がってく部分っていうのがあって。

――:おお。なるほど。

高:僕は本を出したけど、出した経緯は、僕の家にマックファンっていう雑誌の編集・取材の人が来て、マックの話を三十分くらいしたんだけど、そのあと文具とかガジェットとか色んなものの話を、だいたい六~七時間して、「面白いから今度友達連れてくるよ」って言われて、「あ、じゃあ」って言ったら、次に連れてきた友達の一人が出版社の人で。「こういうのなんか書いたりしてんの?」とか言うから、「いや、HPもやってますけど、あとはこんな本を」って言って同人誌を見せたら、そしたらそれを「あ、じゃあそれ本にすりゃいいじゃん」って言うから、「いや、本にするってどうやったらいいんですかね」って言ったら、「じゃあ書く?」って言われて、「じゃあ書きます!」って言ったら、それで本ができたっていうね。

――:すごい。

高:だから、原稿全部作って持ち込むみたいな話はなかなか難しくってさ、実際はその人の実力はわからないから、そうやって持ち込まれた原稿だけで本を作ることって滅多にないのね。どちらかと言うと、違うところで、要は力を踏み蓄えるみたいな部分もあるし、文芸系の人でも、文芸だけでいきなり、たとえば新人賞をとって作家になった人っていうのも勿論いるんだけど、そうじゃない人って、下積みのときには例えばそういう雑誌のライターだったりとか、そういうことをやって、ライティングとかを山ほどやってて、そうやってると、出版の人たちとかの目にも触れるわけじゃん。で、「面白い文章書くよね」っていうのが普通に言われるようになってくると、「いや、実は書きためている、こういうものが、本当は書きたいものがあるんですよ」みたいなのが、聞いてくれる立場にあったりとかすると、「いいじゃん、じゃあそれ作れば」って言ったら、できちゃったりする。だから、そういうのって、横入りっていうか、ちゃんとした階段を登っていくパターンではないやり方っていうのが実は多くて、実はソッチのほうが効率がよかったりするんだけども。ただそっちに関しては「こうすればいい」っていう法則はない。

――:ああ。なるほど、賞をとってこう、とかいうのだけではないっていうことですね。

高:そう。誰と知り合いになるかわからないから約束できないけど、たまたま運がいいっていうだけなんだけど。でも皆たぶん、毎日人とすれ違う人数はだいたい同じなんです。たぶんその時に面白がって貰えるかどうかだし、そしたら次の人が、連れてきてくれるかもしれない。っていうことなんだよね。だから、そうやって次の仕事に繋がっていったりとか。初めて会ったときに、しばらく何かのことで話をしたり、初めて一個仕事を振ってもらったとか、作品を振ってもらったときに「やりました」って出したものが、面白くなかったら次に頼まれることはまぁないので、そこで頑張る。一回目が面白かったら「じゃあ、次、これ誰でもいいんだけど誰に頼もうかな」と思った時に、思い出してもらえたら、次の仕事が来るので。そんなもんですよ、意外と。

――:そうなんですね(笑)

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